本の紹介
『戦略ごっこ―マーケティング以前の問題』(著:芹澤 連)は、マーケティング理論や「戦略」という言葉が安易に使われてきた現場に対し、300件以上の海外論文や実証研究に基づいて「本当に有効か」を徹底的に検証する書です。
本書では、ただ「誰に・何を・どう届けるか」だけを考えるのではなく、それ以前に「そもそもこの市場・このブランドにおいて、どんな前提が成り立っているのか」を問い直すことが重要だと説かれています。たとえば「差別化すれば勝てる」「優良顧客を育てれば売上が拡大する」といった一般論が、データで検証してみると必ずしも成り立っていないケースが多い――ということが紹介されています。
さらに、本書では「新規顧客の獲得」「ライトユーザーへの浸透」「想起されるブランドになること」など、事業成長の鍵となる“入口”の視点を重視しています。既存顧客ロイヤルティの強化だけではなく、むしろ浸透率(顧客数)を広げることが先であるという指摘もあります。
マーケティング実務者・ブランド担当者・新規事業に携わる方などにとって、「なんとなく正しい」とされてきた枠組みを見直し、エビデンスに基づいた思考を持つための貴重な一冊です。ご希望であれば、章ごとの要約や引用に使えるポイントもご用意可能です。
目次
- 序章:エビデンスベーストマーケティングとは
- 第1章:新規獲得と離反防止のエビデンス
- 第2章:ロイヤルティのエビデンス
- 第3章:態度変容、行動変容のエビデンス
- 第4章:差別化戦略のエビデンス
- 第5章:価格戦略、価格プロモーションのエビデンス
- 第6章:商品戦略、ブランドポートフォリオのエビデンス
- 第7章:STP、ブランドイメージ、パーセプションのエビデンス
- 第8章:メディアプラン、クリエイティブのエビデンス
- 第9章:広告予算、マーケティングROIのエビデンス
戦略ごっこ:マーケティング以前の問題を読んだ感想・レビュー
「戦略」の前に顧客の本音を聞け
タイトルに惹かれて読みましたが、まさに長年の経験で感じていた「違和感」が言語化された一冊でした。私は食品卸売業を営んでいますが、派手な「戦略」や「デジタルツール」に飛びつく前に、まず目の前の顧客が何に困っているのか、何を求めているのかという、足元の問題解決を徹底することが最も重要だと痛感しました。
この本が繰り返し説くのは、「誰も買わない場所や売れない商品に、いくら立派な戦略を立てても意味がない」という非常に現実的な視点です。


